ひつじの絵をかいて!

いろいろ拗らせた本の虫女子大生の独り言。すべては主観であり、個人的な意見です。

一直線じゃない「進化」と就活──池澤夏樹『科学する心』

就活がしたくない。 

(この下はもう全然読まなくていいです、ただの愚痴なので)

 

びっくりするほど就活がしたくない。このまま穴掘って寝たい。本読んで映画観てマンガ読む高等遊民になりたい。就活したくない。したくない、就活。

 

私は現在大学三年生です。

新卒採用は一応経団連に「三月からだよ、抜け駆けはしちゃだめだよ」と企業は縛られてはいるけれど、優秀な人材よより早く確保すべく、年々就活は早期化しているらしいです。

いわゆる早慶とか「上の方の大学」の方が早期に就活に取り組む人が多いらしいんですけど、例にもれず私の周囲も就活就活でそわそわし始めています。というか乗り遅れてたらしく、もう5月6月からがっつりやってる人もいるみたいでした。

で、現在大学三年生の夏休みが半分以上過ぎたところですが、私はもう就活に飽きました。というかちゃんとやってすらないです。インターン何個か出して何個か受かったけど、もうマイナビ開きたくないです。

 

なんでこんな急に疲れてしまったのか。一応考えてみたんですけど、たぶんそれは

①インスタのストーリーで「インターン帰りにご褒美♡」とかTwitterで「グルディスで無能が~」とか見て、行動していないくせに心が折れた。

②就活本で心が折れた。

が原因ではないかと考えました。

 

①は、うん、気持ちはわかるんです。スーツ着て名前だけは毎日聞くような会社に行くんだもんね、せっかくなら承認欲求満たしたいよね。とりあえずあんまりうるさい人はミュートして事なきを得ました。

 

②~~~!!!多分こっちが決定的にダメだったんだと思います。先輩が良かれと思ってくれた就活本の、自己PRの仕方のところに、企業によって顔を使い分けろって書いてあったんですよね。

まずBIG5(?)で性格を分析して、企業の求める人材も分析して、その分析に基づいて企業の求める人材であることをアピールせよって。言ってることは全うだと思うんですけど、あー、このままの私じゃだめなんか、と思って何かがぽっきり折れました。

 

恋愛においても「ありのままの私を愛して」っていうのは理想だけどやっちゃいけないのはわかってるんですよ。そりゃそのまま愛してもらえたら理想だけど、彼氏は家ですっぴん眼鏡で前髪全部上げてぼさぼさに束ねた私にはちょっと引くだろうし、整理されてないごった煮に本棚にもちょっと引くと思います。だから見せてないし、それでうまくやれている。

 

就活においてもそれが一緒ってだけですよね。

 

でも、全然業界分析してないけど、外資と日系の違いはあるにせよ、求めてる人材像って大体一緒なんじゃないんですか。自発的に行動出来て、リーダーシップがあって、ようは金を稼げる人材。自己PR例でも、アルバイト先のカフェの業績を20パーセント伸ばしたとか、文化祭での集客率がなんとか、結局は数字で(数字だとわかりやすいよね、そうだよね)、結局はお金で。

 

私がサークルでコツコツやってるボランティアは、お金が、数字が絡まないからボランティアなんだよ!!

 

ぐるぐるしてるけど、結局言いたかったのは、就活において求められているのは、企業にとって金を稼げる人材で、それは均一なもので、私はそれを自分に当てはめるのは苦しいってことです。

 

 

金を稼ぐということに関しては私よりも得意な人はたくさんいて、私は彼らのただの下位互換。そういう彼らは、普段飲み歩いていて、本なんか読まなくて、私が好きではない人種。それと一緒にならなくはいけないなんて!

 

文字にしてみると幼稚ですね。大人になりたくないってわめく大人みたい。

 

で、結局就活にやる気を失った私は、夏休み本ばかり読んでいました。そのうちの一冊がこれ。

 

科学する心

科学する心

 

 作家の池澤夏樹さんが書いた科学にまつわるエッセイです。私は池澤さんの作品を読んだことはありませんでしたが、気まぐれに開いたら面白くて、すぐ読み終わってしまいました。

 

エッセイ内容はウミウシから始まり、原子力、『サピエンス全史』、『昆虫記』、AIなど多岐に渡りますが、私が一番好きだなあと思ったのは進化論の話でした。

 

(人の進化の図を挙げて)ホモ・サピエンスに至る「進化」はそんな一直線の向上ではなかった。今の我々すなわちヒトの学名はHomo sapiens sapiens だが、ヒト亜族がチンパンジー亜族と別れた後でも、少なくとも十二種類のヒト属が生まれて、たった一つ(つまりあなたとぼく)を除いて消滅した。左から右へ一直線の進歩的な進化ではなかった。一本の木を下から上へ登るような分岐と末端、つまり絶滅。まだなんとかしばらくは未来があるのが我々、とはたして言い切れるか。

 これが「進化」ということである。

 

 (池澤夏樹『科学する心』、集英社インターナショナル、2019年、p.88)

 

つまり私たちはサルから必然的に優れているから進化して、現在も生き残っているわけではないのです。様々な条件が重なって、運よくまだ絶滅していないだけ。優れているものから順番に並べていけば、正しい道筋ができるわけでもない。

 

上手く読み取れている気はしないのですが、それでもバリバリの文系の私が科学に救われる思いがするなんて考えてもみませんでした。

 

金を稼ぐことができる人から、前ならえで一列に並べられたとて、もうあまり怖くありません。だってそんな一列は存在しないのだし、明日にはあなたは絶滅するかもしれないのだし。

 

そんなことを言ってる私の方が絶滅に近いのかもしれませんが。