ひつじの絵をかいて!

いろいろ拗らせた本の虫女子大生の独り言。すべては主観であり、個人的な意見です。

みんな少しずつ欠けている──彩瀬まる『骨を彩る』

私の中で、いつも、骨みたいなものが、足りなくて」 (彩瀬まる『骨を彩る』、幻冬舎、2017年、p.113) 自分の中に欠落を見出したのは、いつのことだったでしょうか。その欠落のことを思うと、何者にもなれない自分が少しだけ特別なものになれた気がしました…

完璧には寄り添えない、人間と人間同士のすきま──彩瀬まる『朝が来るまでそばにいる』

彩瀬まるさんの『朝が来るまでそばにいる』 を読みました。 朝が来るまでそばにいる 作者: 彩瀬まる 出版社/メーカー: 新潮社 発売日: 2016/09/21 メディア: 単行本 この商品を含むブログ (3件) を見る ほの暗い雰囲気の短編集で、どの話にも幽霊や怪物が登…

一直線じゃない「進化」と就活──池澤夏樹『科学する心』

就活がしたくない。 (この下はもう全然読まなくていいです、ただの愚痴なので) びっくりするほど就活がしたくない。このまま穴掘って寝たい。本読んで映画観てマンガ読む高等遊民になりたい。就活したくない。したくない、就活。 私は現在大学三年生です。…

無敵の恋愛と、その陰の仄暗さ───BUMP OF CHICKEN「新世界」

BUMP OF CHICKENが好きです。世間的にはBUMPと言えば「天体観測」のイメージが強いバンドだと思います。もしくは、中学生のころにはまる、中二病的なものかもしれません。 私もご多分に漏れず、中学生のころにはまり、しかし中高生で卒業することもなく、大…

推しが死んだ話

突然ですが、推しが死にました。 今回は本の話でもなく、映画の話でもなく、ただのオタクによる弔辞です。多分気持ち悪いです。 現在大学三年生の私は、一、二年生の時に履修上限まで授業を詰め込んでいなかったせいで、結構な積み残しの単位があります。そ…

なめられても言い出せない私へ──芥川賞候補作・高山羽根子『カム・ギャザー・ラウンド・ピープル』

芥川賞をみんなで読む読書会(ちょっとぼやかし)に参加して、自分のなんとなくの感想が言語化できたので、まとめます。 高山羽根子『カム・ギャザー・ラウンド・ピープル』は女の子のための物語でした。(と言ってしまうと安っぽくなるので嫌なのですが) …

深読みすると元カノを殺したくなる話──映画「武士の献立」

ゼミの文献購読やら、掛け持ちしているサークルの仕事やらで忙殺されて、だいぶ更新が滞ってしまいました。 忙しい中にも何とか本を読んだり映画を見たりはしてるので、時間のある時にそれらの感想をゆっくり書いていけたらと思っています。 書きたいことを…

女の武器を使うことの是非の話――映画「バーレスク」

残念なことに、日本はいまだ前時代的な男女差別の構造を抱えています。政治家や会社役員の男女比を見れば一目瞭然です。大学生である私も、これまでいたるところで社会に出たら女性は大変であるという話をされてきました。授業中の雑談で教授がぽろりとこぼ…

現実を克服するための創作の話──湯浅正明監督「夜明け告げるルーのうた」

一般教養の授業だったか、何かの本だったか、はたまたネットか、どこで知ったのかは覚えていませんが、印象に残っている話があります。 それは、既存の社会の根本を揺るがすような事象が起きると、創作人は必ずそれを自身の創作に何かしら取り込むという話で…

一過性の小説の話──古市憲寿『平成くん、さようなら』

良い小説を定義するのは難しいことだと思います。 出版社にとっての良い小説とは、売れる小説かもしれませんし、読者にとっての良い小説とは、自分に寄り添ってくれるものかもしれません。アイドルファンにとっては、推しが出版した小説が一番良い小説かもし…

元カノ殺す界隈におくる、戦闘力のある本の話──綿矢りさ『かわいそうだね?』

「元カノ殺す界隈」、とは何ぞや?という方も多いかと思います。 初っ端から物騒な単語を繰り出してしまい、失礼いたしました。 そして、元カノ殺す界隈のみなさま、ごきげんよう。Twitterにそれ専用のアカウントは持っていないものの、いつもひっそりと皆様…

ホラー初心者がホラー小説を読んだ話──鳥谷綾斗『散りゆく花の名前を呼んで、』

人にはそれぞれの趣味嗜好があるように、好む本も様々です。 小説、実用書、絵本というジャンル分けの中に、さらに小説であればミステリ、ファンタジー、時代小説、純文学とさらなるジャンルがある中で、そのすべてを網羅しているという人はおそらくいないの…

主人公としての資質の話──吉本ばなな『N・P』

こんにちは。いつも前置きが本編ですと言わんばかりに長くなってしまうので、今日はダイレクトに本の話に入ろうと思います。 吉本ばななさんの『N・P』を読みました。 N・P (角川文庫) 作者: 吉本ばなな 出版社/メーカー: KADOKAWA 発売日: 1992/11/06 メデ…

政治的正しさと小説の話──雪舟えま『緑と楯 ハイスクール・デイズ』

「ポリティカルコレクトネス」という言葉をご存知でしょうか? 日本語だと「政治的正しさ」と訳されるものです。 ポリティカル・コレクトネス(英: political correctness、略称:PC、ポリコレ)とは、性別・人種・民族・宗教などに基づく差別・偏見を防ぐ目…

読書歴の話──①高校二年生編+α

こんにちは。これまでもいくつか記事を書いてきましたが、最初に自己紹介をするのを忘れていたことを思い至ったので、今回は自己紹介がてらこれまでの読書遍歴をお話します。 現在都内の大学三年生で、文系ですが専攻は小説とは程遠い分野です。読書の他にも…

キャラクター小説かと思ったら違った話──雪舟えま『バージンパンケーキ国分寺』

キャラクター小説というジャンルはご存知ですか? ウィキ先生では「ライト文芸」として紹介されています。まだジャンルとしての歴史が浅いからか、様々な呼び名があるようです。 「ライト文芸」というジャンルには明確な区分けが存在していないが以下のよう…

旅に連れて行った本の話──江國香織『きらきらひかる』

明日から旅行に行く、となったら、あなたはどんな荷造りをしますか? 日程分の服を着回しも考えて用意し、メイクポーチを入れて、あ、ヘアアイロンも必要かもしれない。コンタクトレンズも持っていかなくちゃ。絶対歯ブラシって忘れがちだよね……。と、一般の…

本をジャケ買いした話──渡辺優『ラメルノエリキサ』

突然ですが、皆さんはどのように次に読む本を決めますか? 人に勧められたものを読むのか、背表紙を見て直感で選ぶのか、新刊から節操なく読んでいくのか、気になる隣の席のあの子が手にしていた本を読むのか……。様々なタイプの人がいることとは思いますが、…