ひつじの絵をかいて!

いろいろ拗らせた本の虫女子大生の独り言。すべては主観であり、個人的な意見です。

無敵の恋愛と、その陰の仄暗さ───BUMP OF CHICKEN「新世界」

BUMP OF CHICKENが好きです。世間的にはBUMPと言えば「天体観測」のイメージが強いバンドだと思います。もしくは、中学生のころにはまる、中二病的なものかもしれません。

 

私もご多分に漏れず、中学生のころにはまり、しかし中高生で卒業することもなく、大学三年生の現在に至るまで、一番大好きなバンドであり続けています。

 

初音ミクとコラボした楽曲やライブ、アニメ「血界戦線」や「三月のライオン」のOPを担当するなど、サブカル色の強いBUMPですが、この前ロッテのCMとコラボした楽曲を発表しました。

 

それがこの動画です。血界戦線の監督がアニメーションを担当したかわいい絵柄で、ロッテのお菓子が擬人化されて次々に登場するものです。

 


ロッテ×BUMP OF CHICKEN ベイビーアイラブユーだぜ フルバージョン

 

駅のコンビニで偶然出会った女の子に一目ぼれした男の子の様子がコミカルに描かれるアニメーションに合わせられた楽曲のタイトルは、「新世界」。まさに人を好きになったことで、世界が変わることを描いた歌詞ですが、長らくBUMPリスナーであり続けた身としてはこの歌詞についてどうしても語りたいことが、、!

 

とりあえず、JASRACに怒られない形で歌詞を引用します↓

 

「新世界」BUMP OFCHICKEN

作詞  Motoo Fujiwara

作曲    Motoo Fujiwara

 

君と会った時 僕の今日までが意味を貰ったよ

 

頭良くないけれど 天才なのかもしれないよ

世界がなんでこんなにも 美しいのか分かったから

 

例えば 曲がり角 その先に君がいたら

そう思うだけでもう プレゼント開ける前の気分

 

泣いていても怒っていても 一番近くにいたいよ

なんだよそんな汚れくらい 丸ごと抱きしめるよ

ベイビーアイラブユーだぜ ベイビーアイラブユーだ

ちゃんと今日も目が覚めたのは 君と笑うためなんだよ

 

ハズレくじばかりでも  君といる僕が一等賞

僕がこれが良いんだ 何と比べても負けないんだ

 

世界はシャボン玉で 運良く消えていないだけ

すぐ素直になれるよ それが出来るように出来ている

 

天気予報どんな時も 僕は晴れ 君が太陽

この体 抜け殻になる日まで 抱きしめるよ

ベイビーアイラブユーだぜ ベイビーアイラブユーだ

君と会った時 僕の今日までが意味を貰ったよ

 

もう一度眠ったら 起きられないかも

今が輝くのは きっと そういう仕掛け

もう一度起きたら 君がいないかも

声を聞かせてよ

ベイビーアイラブユーだぜ

 

ケンカのゴールは仲直り 二人三脚で向かうよ

いつの日か 抜け殻になったら 待ち合わせしようよ

ベイビーアイラブユーだぜ ベイビーアイラブユーだ

昨日が愛しくなったのは そこにいたからなんだよ

 

泣いていても怒っていても 一番近くにいたいよ

どんなに遠く離れても 宇宙ごと抱きしめるよ

ベイビーアイラブユーだぜ ベイビーアイラブユーだ

明日がまた訪れるのは 君と生きるためなんだよ

 

僕の今日までが意味を貰ったよ

 

 ①BUMP OF CHECKENの「アイラブユー」

 

BUMPは(というか作詞をしている藤原基央は)「アイラブユー」と明確に(たぶん)これまで書いていませんでした。

 

そもそもBUMPの楽曲に恋愛ソングはそう多くはなく、「才能人応援歌」や「Stage of the ground」など頑張る人にそっと寄り添う曲が多い印象です。公認ラブソングや、これは恋のうたなのだろうなという曲もないわけではなく、「車輪の唄」「アルエ」(藤くんが綾波レイに向けた歌)「リリィ」などが存在します、が、「愛してる」「アイラブユー」という歌詞は登場していません(たぶん)。

 

Jポップではそれこそ大盤振る舞い歳末大セールと言わんばかりに浴びせられる「愛してる」「大好き」「アイラブユー」の文言たち。それは共感を目的にした楽曲なので、多くの人が共感しやすいであろう恋愛を歌詞に盛り込むのも、多くの人の心に届くためにダイレクトな言葉遣いをするのも、ある意味正しいと言えます。

 

しかしBUMPはそうしてきませんでした。それはバンドとしての、藤原基央としての信念しょうし、それがBUMPと他のバンドを隔てる一つの区切りでもあると思います。

 

そのBUMP OF CHICKENがついに「アイラブユー」と歌った。しかも「だぜ」が付いている。ストレートな「アイラブユー」だけでなく、照れ隠しのように、「だぜ」が。

 

藤くんはどこかのインタビューでここの「アイラブユー」はただの恋愛的なものだけでなく、親愛を含む、家族などにも向けられる「アイラブユー」だと述べていたので、必ずしも恋愛関係の「アイラブユー」だけではないことがわかります。

 

しかし、二十数年曲を作り続けたBUMPから、ようやく(?)はっきりと出てきた「アイラブユー」には、尊さを禁じえません。

 

②明るさの陰にあるほの暗さ

BUMPの楽曲の魅力の一つは、どの曲も百パーセント明るいものではなく、数パーセントのほの暗さを持っているところだと考えています。

 

「レム」「ハンマーソングと痛みの塔」など暗いのに明るい曲から、「飴玉の唄」「R.I.P」など明るいのに暗い歌などレパートリーは様々ですが、「新世界」は後者の明るいのに暗い歌に分類されるものでしょう。

 

たとえば、こんなところ。

ちゃんと今日も目が覚めたのは 君と笑うためなんだよ

世界はシャボン玉で 運良く消えていないだけ 

もう一度眠ったら 起きられないかも

今が輝くのは きっと そういう仕掛け

もう一度起きたら 君がいないかも

声を聞かせてよ

『CUT』『JAPAN』のどちらかで藤くんがインタビューに答えていたように、「アイラブユー」が注目されるこの曲も、「明日起きたら君がいないかも」というBUMPの曲にある根源的なところからきている、元になっているのは他の楽曲と何ら変わりのないものではないでしょうか。

 

ロッテのCMの通りに解釈するのであれば、中学生かもしくは高校一年生くらいの男の子の恋愛の様子です。駅で偶然会った年上の女の子。もう一度会えるかなんてわからないけれど、夢の中に出てきてしまうくらい好きで、何度も出会ったお店に通ってしまう男の子。

 

中学生、高校生の頃の恋愛を思い返すと、(恥ずかしいですが)どこか無敵なところがなかったでしょうか。

 

好きな人はたいてい同じ教室の中か、少なくとも学校の中にいて、恋愛の条件はせいぜい顔か身長で、生涯推定年収だとか年齢だとかを気にしないで恋愛ができる。世界が続くことに何の不安も抱かずに、また明日ねと言いあって帰る。体育祭や文化祭などの行事が季節ごとにあって、いつもよりあの子と話せるだろうかと期待したり、席替えの結果にそわそわしたり。

 

新世界の歌詞にも、そのような要素は随所にみられます。

頭良くないけれど 天才なのかもしれないよ

世界がなんでこんなにも 美しいのか分かったから

 天気予報どんな時も 僕は晴れ 君が太陽

 ですが、同時に、先に挙げたようなほの暗い歌詞も含まれているのです。

 

人生に何の疑いも不安もない時期の、ウキウキの時期の恋愛。

であるはずなのに、明日この世界は消えるかもしれない、君がいないかもしれないという、少し遠いところを見ているBUMPならではの歌詞が、エモさ全開です。

 

個人的に、頭を抱えてしまうくらいエモくて心の奥がぎゅっとなった歌詞がここ。

 いつの日か 抜け殻になったら 待ち合わせしようよ

 「抜け殻になったら」は様々な解釈が可能だとは思いますが、私としては死後のことを指しているのではないかと考えます。

 

人生これからで、何も怖くないであろう時期に、すでにいつか来る死を想っているところ(まさにメメントモリ)と、同じ時に死ねるわけではなく、どちらかがどちらかを置いて行ってしまうという現実まで見えているところの二つが、この歌詞が私に刺さってしょうがないポイントです。

 

さらに、いつか来たる死を直視していながら、待ち合わせしようというどうしようもなく前向きであるところに追い打ちをかけられます。

 

BUMPが「天体観測」だけだと思っているなんてもったいない。ぜひフルを!サブスクでもCDでもいいから聞いてほしいです!!!!!!!

 

 

aurora arc

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