ひつじの絵をかいて!

いろいろ拗らせた本の虫女子大生の独り言。すべては主観であり、個人的な意見です。

本をジャケ買いした話──渡辺優『ラメルノエリキサ』

突然ですが、皆さんはどのように次に読む本を決めますか?

人に勧められたものを読むのか、背表紙を見て直感で選ぶのか、新刊から節操なく読んでいくのか、気になる隣の席のあの子が手にしていた本を読むのか……。様々なタイプの人がいることとは思いますが、私はずばり、「好きな作者の本を読む」タイプの人間です。

本を読むにはそれなりに時間がかかります。薄い文庫本一冊でも、二、三時間はみなくてはなりません。しかし残りの人生は有限!(まだ二十代ですが)世の中には毎日何百冊もの本が送り出されていて、しかも何百年と前から存在する名作もごまんとあるのです。

そんな切迫した(?)状況なのに、つまらない本に余計な時間を取られたくない。

なので、私は好きな作家さんの本を端からあらかた、ブルドーザーのように総なめしていく方法で、読書を続けてきました。

青い鳥文庫などの児童文学から、いわゆる「大人の本」を読むきっかけになったのが、宮部みゆきさんの『心とろかすような』だったので、私の本棚の1割は宮部さんの本で占められています。『模倣犯』、『蒲生邸事件』のような推理小説から、『ブレイブストーリー』、『ドリームバスター』、『ここはボツコニアン』などのファンタジーまで、現代ものはあらかた制覇しています。(宮部さんは時代小説もたくさん書かれていますが、それはもう少し年を取ってから読んでいければと思っています)

宮部さんを制覇してからは、傾向が似ていて、よく聞く作家さんで行こうと、東野圭吾さん(ガリレオ!!)にはまり、誉田哲也ストロベリーナイト!!)さんにはまり、有川浩さん(図書館戦争!!自衛隊三部作も大好きです)にはまり……。その他にも上村菜穂子さんや森見登美彦さん、辻村深月さんや、綿矢りささんなど、王道エンタメ作家さんたちを好んで読んできました。

 

しかし、大学一年生まではその読み方を貫いても特に問題なかったのですが、大学二年生の秋ごろ、そろそろ限界を感じてきました。有名どころの気になる作家さんはあらかた読んでしまったような気がする。連想ゲームのように傾向の近しい作家さんを読んでは来たものの、近しいからこそ、もうこれ以上連想しても、同じ作家の無限ループに陥ってしまう……。ここからどうやって新しい本を探せばいいんだ。

 

すっかり世界が狭まっていた私ですが、頭を抱えながらアルバイト先の書店に出勤してひらめきました。ジャケ買いすればいいんじゃん。

 

ジャケ買い(ジャケがい)とは、レコード、CD、DVD、本などのメディア商品を内容を全く知らない状態で、店頭などで見かけたパッケージデザインから好印象を受けたということを動機として購入すること。ジャケット買いとも

(参照:Wikipedia 「ジャケ買いhttps://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B8%E3%83%A3%E3%82%B1%E8%B2%B7%E3%81%84 最終閲覧日 2019年3月26日)

 

ジャケ買いすればいいんじゃん(二回目)。

幸い当時のバイト先は書店。毎日大量の本が入荷しては返品されるのを繰り返しています。普段の商品整理の時は、理性でとどめないと大量の本を買ってしまいそうなので、「これはバイト先の本、私が節操なく買うものではない」と暗示をかけていましたが、それを一度解いてみたら、なんとも魅力的な装丁の本ばかりです。

 

前置きが長くなりましたが、そうして新刊台に乗っていて一目ぼれした本がこちら!

 

ラメルノエリキサ (集英社文庫)

ラメルノエリキサ (集英社文庫)

 

 

 

渡辺優さんの『ラメルノエリキサ』です。表紙で不敵な顔をして笑うセーラー服の少女。ナイフで描いたような書体の「ラメルノエリキサ」という謎フレーズ。なにより宮部さんの推薦コメント「なんて不謹慎な小説!」。

魅力的な表紙に、私が妄信している神様のコメント付き。ジャケ買いにふさわしすぎる本が、こんなに近くにあったなんて……!

 

『ラメルノエリキサ』は、小説すばる新人賞を受賞した、渡辺優さんのデビュー作です。

愛ネコにけがをさせたクソガキに対して、「殺してやる」と六歳のころからやられたら復讐をモットーに生きてきたりな。女子高生になったある日、夜道で背中を刺され、犯人は「ラメルノエリキサ」という謎のワードを残して逃走してしまう。「お前絶対ぶっ殺すからな! 」復讐に燃えるりなは犯人捜しを始めるが……?

 

スピード感にあふれた、最高の青春小説です。凝った文体ではないけど、さくさく読めて心地いい語り口も魅力。宮部さん曰く「不謹慎」だけれども、とても健全でさわやかな読後感。もうこの矛盾は、実際にこの本を読んでもらわないと伝わらないので、詳しくは読んでください。

物語の底に流れる、渡辺優さんの哲学も最高で、私のフィーリングと非常にマッチすることも確認したので、「ブルドーザーする作家リスト」に入れました。

 

文庫がでたからこれも入手しまして、とてもハッピー。

自由なサメと人間たちの夢 (集英社文庫)

自由なサメと人間たちの夢 (集英社文庫)

 

 

以上、作家ブルドーザー女が、久しぶりにジャケ買いする話でした。